海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
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設立記念大会シンポジウム2「水辺活動と安全に関する取り組み」
水辺の体験活動における安全講習会の報告
進藤哲也(独立行政法人国立青少年教育振興機構)
キーワード:青少年 青少年教育施設 体験活動 体験の風をおこそう 指導者養成
【はじめに】
国立青少年教育振興機構は、平成18年度に、国立オ
リンピック記念青少年総合センター、国立青年の家、国
立少年自然の家の3法人を統合し、我が国の青少年教育
のナショナルセンターとして設立され、「体験活動を通
じた青少年の自立」をテーマに、様々な取り組みを行っ
ている。
特に、平成22年度より民間14団体(当初は8団体)
と連携して、安心安全な体験活動を促進するため、「体
験の風をおこそう」運動を推進している。
【青少年教育施設の現状】
当機構には、センターはじめ全国に「交流の家」及び
「自然の家」合わせて28の教育施設があり、その環境
を活かした自然体験活動や生活体験活動など様々な体
験活動の場と機会を青少年等に提供するとともに、青少
年教育指導者等の養成や資質能力の向上を目的とした
各種研修事業などを実施している。
その中で、青少年等を対象とした体験活動で主に指導
に当たるのは、職員(主に企画指導専門職)及び研修指
導員である。研修指導員は、登山や海事など専門的な知
識や技術を備えている専門家である。しかしながら、企
画指導専門職は、多少の指導や活動経験はあるものの必
ずしもその活動の専門家とはいえない。そのため、各施
設では、独自に研修を実施したり、関係団体等が実施す
る研修会に参加させたりするなど、その技術や指導力の
向上に努めているところである。
そのような現状の中、「安心安全」は体験活動の土台
であると考え、当機構では、基本的な安全管理に関する
研修の必要性を鑑み、平成22年度より国公立青少年教
育施設、教育委員会関係者、民間事業者等を対象に「体
験活動安全管理講習~水辺編~」を実施している。
【体験活動安全管理講習~水辺編~の状況】
平成22年度は、国立江田島青少年交流の家を会場に
2泊3日、44名(うち公立施設等28名)の参加者で
実施した。主な内容は、実技としてカッター研修を中心
に水辺活動と救助技術、講義は事故事例と法的対応、安
全管理マニュアルの作成について行った。
平成23年度は、国立若狭湾青少年自然の家を会場に
2泊3日、37名の参加者(うち公立施設等22名)で
実施し、シーカヤックや磯遊びなどの実技と安全指導、
講義は事故事例と法的対応、安全管理マニュアルの点検
と作成などとした。
参加者の多くは、日頃から学校や子ども会などの施設
利用者や事業参加者に対して、水辺活動等を指導したり
管理したりしているが、講習終了後「事故を起こしては
ならない。当たり前のことであるが、日頃からのリスク
マネージメントとして危険因子の事前の発見と対応、ま
たきちんとした指導技術の重要性をあらためて認識し、
帰所後すぐに点検を行う。」「もしも事故が起きたとき
の対応について職員全員で再点検を行う」などの感想を
まとめていた。
なお、参加者には、本講習で学び得たことを自分の知
識だけにせず、所属施設や団体等において、伝達講習等
を実施することを依頼している。
平成24年度は、静岡県立三ケ日青年の家を会場に、
2泊3日で実施する。
【まとめとして今後の課題と展望】
体験活動の充実に重要な要件は、「豊かな活動の場と
機会」「充実した活動プログラム」そして「優れた指導
者」の3つであると考えている。
特に、「優れた指導者」の養成・研修において「安全
管理」に関する研修は必須であり、指導者としての重要
な資質能力である。
当機構では、「安全管理講習」について、水辺編のほ
か山編も実施しており、今後も講習会の充実と発展に取
り組んでいく予定である。
なお、体験活動に関する指導者養成については、現在N
PO法人自然体験活動推進協議会と連携して、新たなナ
ショナルスタンダードとなる養成カリキュラムの制定
及び養成認定制度の実施に向け準備しているところで
ある。
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