海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
24
Oa09. 臨海学校における生きる力の向上に関する研究
矢野 正(大阪女子短期大学)
キーワード:生きる力、児童、臨海学校、遠泳
【目的】
本研究は、小学校での
4
5
日臨海学校に着目し、児童
の「生きる力」の育成に期し、臨海学校の教育効果を明ら
かにすることを目的とした。
【方法】
1.
研究対象
T
小学校
4
5
6
年生で臨海学校に参加した児
317
名を対象とした。実習は、
2010
7
13
日から
17
日の
4
5
日間である。
2.
調査及び手続き
(1)
生きる力の測定 本研究では、児童
の生きる力の変容を測定するため、橘らが作成した「こど
IKR(
生きる力
)
評定用紙」を採用した。
(2)
調査時期 臨
海学校前
(
以下
PRE)
、実習直後
(
以下
POST1)
、実習
1
ヵ月
半後
(
以下
POST2)
の計
3
回に
IKR
調査を実施した。すべて、
担任が用紙を配布回収する集団調査法を用いた。
【結果と考察】
1
.「生きる力」得点の変化
全体の「生きる力」得点
(F(2
632)=12.78 p
0.001)
大きな変化が認められ、得点は、実習後に顕著
(p
0.001)
に高まっており、
1
ヵ月半後まで有意
(p
0.01)
に維持され
ていた。
2
.総合的考察
児童の「生きる力」得点は、臨海学校後に顕著な向上を
みせ、実習
1
ヵ月半後まで維持された。このことから、臨
海学校は、児童の生きる力の向上効果に強く影響を及ぼし
ていることが示唆される。また、「生きる力」を構成する
上位指標である、「心理的社会的能力」「徳育的能力」「身
体的能力」の得点すべてに向上させることが明らかとなっ
た。上位指標のなかでも、「心理的社会的能力」に及ぼす
影響が大きいことが明らかとなった。
【結論】
T
小学校の臨海学校において、児童の生きる力に顕著な
向上が認められた。また、その影響は
1
ヵ月半後まで影響
が維持されていた。すべての学年において生きる力の向上
が認められ、初めての参加経験である4年生でもっとも高
かった。
Oa10. 大学における海洋実習が参加者の海洋リテラシー
に与える影響についての比較研究
蓬郷尚代・千足耕一(東京海洋大学大学院)
平野貴也(名桜大学)
キーワード:海洋リテラシー、質問紙調査、プログラム比較
【目的】
本研究は、海についての理解を「海洋リテラシー」とと
らえ、大学において実施されている海洋実習が参加者の海
洋リテラシーに与える効果を明らかにし、そのプログラム
による特徴を比較検討することを目的とする。
【方法】
大学正課体育として実施された海洋実習のうち、スクー
バダイビング、遠泳、ウィンドサーフィンをそれぞれ単一
プログラムとして実施された実習参加者を調査対象とし
て、質問紙調査を実習前、実習後の計2回行った。調査用
紙は9つの下位尺度を含む36項目で構成されており、36
項目それぞれについて、1「まったくあてはまらない」か
ら6「とてもよくあてはまる」の6件法で評価してもらっ
た。得られたデータのうち欠損値を除いたものを分析対象
とし、スクーバダイビング86名、遠泳89名、ウィンドサ
ーフィン32名のデータを用いて分析・統計処理を行った。
【結果と考察】
海洋リテラシー下位尺度において、スクーバダイビング
では「F1.海での活動能力」「F4.海での活動経験」「F6.海
での現象と危険性について説明する力」「F7.資源と社会
的背景について説明する力」「F8.海との関係について説
明する力」「F9.環境と生態系について説明する力」の6尺
度において実習前から実習後にかけて有意な向上が認め
られた。遠泳ではF1、4、6、7、8の5尺度において有意
に向上し、また、「F2.海の必要性についての理解」「F3.
海に対する感情」は低下した。ウィンドサーフィンでは有
意な変化が認められなかった。プログラム間の比較では、
各プログラムとの間で実習前後における海洋リテラシー
尺度の変化のパターンには差があることが明らかとなっ
た。また、スクーバダイビングと遠泳においては、実習前
後における単純主効果が認められた。
【結論】
海洋リテラシー尺度の変化のパターンには差があるこ
とから、大学における単一プログラムによる海洋実習はプ
ログラムによってその効果が異なると考えられる。
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