海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
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Oa01. ERM(Engine-room Resource Management)に関する
基礎研究
有田俊晃(航海訓練所)、杉本文太(航海訓練所)、
尾崎高司(航海訓練所)、藻垣昌昭(航海訓練所)、
神田一郎(航海訓練所)
キーワード:教育・訓練、機関部、ERM
【目的】
国際海事機関(IMO)は、マニラ改正において機関士の
運用レベル能力要件に ERM に関する知識とその実践を求
める内容を盛り込んだ。この改正に基づき、既存のものを
見直す作業や新たに発生した作業が進められているが、当
所における現行実習訓練において ERM 要件の理解に寄与
できていると感じる部分もある。このようなことから、当
所の現行実習訓練の有効性と改訂材料を明確にすること
を目的としている。
【方法】
非技術要件であるERM要件が、人的要素/資質に依存す
ることから、教育・訓練を受けている実習生の理解状況に
着目し、「安全な機関室当直の維持」に係る現行実習訓練
が、どの程度マニラ改正におけるERM要件である能力・原
則の理解に寄与しているのかをアンケートを実施し、結果
を解析する。
【結果と考察】
能力及び原則の理解について、当直業務に従事する前段
階の講義による理解、当直業務における巡視・計測による
理解、当直中に実施する作業・操作による理解、また副直
という当直機関士と同様の業務に従事させた場合の理解
に大別され、概ね現行実習訓練がERM要件の理解に寄与し
ている結果が得られた。また理解の寄与率について、34%
~84%の範囲で差が現れ、現行実習訓練の改訂材料として、
ERM要件の理解向上に寄与する実習展開の必要性が示唆さ
れた。
【結論】
今回は、1年間という実習訓練の中で培われ理解される
ERM要件について結果が得られた。また理解の寄与率から、
ERM要件の理解向上に寄与する実習展開の必要性が示唆さ
れた。
Oa02. 帆船の訓練効果に関する研究(資質訓練の効果)
国枝佳明(航海訓練所)、猪俣活人(航海訓練所)
キーワード:帆船訓練、EQ、CHEQ、EQ行動特性
【目的】
帆船における航海訓練は、リーダーシップ、チームワー
クなどの資質の涵養に適している。筆者らはEQ(Emotional
Intelligence Quotient:心の知能指数)行動特性を測定す
ることで、帆船の航海訓練における資質の向上を示すこと
ができると考え、 EQ テストの一手法である
CHEQ(Competency Highlighter Easy Quickly:EQ ベース
簡易採用検査)を使用し、EQ行動特性を調査した。
【方法】
平成 23 年度海王丸遠洋航海において、乗船中の大学航
海科実習生52 名に対してCHEQ を用いて検査を実施した。
検査は遠洋航海出航前に第1回目、寄港地のホノルル入港
前に第2回目を実施した。【結果と考察】
全てのEQ 行動特性において第2 回目が向上しており、
海王丸の航海訓練が実習生の内面的成長に寄与している
ことがうかがえる。また、顕著な向上を示している EQ 行
動特性は、コミュニケーション(上昇率14.5%)、ポジテ
ィブ思考力(上昇率 13.8%)などであった。帆船での訓
練においてコミュニケーションが必要な状況が多い。例え
ば、マスト上でのセイルを畳む作業や緊張したロープを扱
う作業など常に危険と隣り合わせの環境で、コミュニケー
ションを取らなくてはならない作業が多く用意されてい
ることが理由に挙げられる。
個々の事例について、実習生の感想文をカウンセリング
の傾聴法に照らし合わせて解析を試みた結果、帆船の訓練
や生活との関連が明らかになった。
【結論】
(1)帆船の航海訓練による資質の涵養について、EQ行動特
性の向上という形で定量的に示すことができた。
(2)帆船の航海訓練によるコミュニケーション能力及びポ
ジティブ思考力の向上は顕著であり、10%以上の高い上
昇率が示された。
一般研究発表および実践報告
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