海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
21
Oa03. 船舶の視界制限状態における避航判断について
-学生の避航判断の特徴-
勝田伸也(神戸大学)、渕 真輝(神戸大学)
藤本昌志(神戸大学)、持田高徳(東京海洋大学)
キーワード:船舶、視界制限状態、避航判断、学生
【目的】
海難審判庁(
2007
)は、視界制限状態における船舶衝突
事故の原因について、早期に避航しない、左転が禁止され
ている状況で左転する、レーダー情報の不適切な利用等を
報告している。そこで本研究では、学生の視界制限状態に
おける避航判断を調査し、学生の特徴を把握することを目
的とする。
【方法】
船舶職員養成コース(航海)に属する神戸大学海事科学
部の4年生(必要な講義を受講済み)を調査対象者とし、
視界制限状態における避航判断に関する質問紙調査を行
った。調査は、航法演習前(
46
人)、航法演習後(
38
人)、
学内船舶実習後(
49
人)の3回行った。また、航法演習
前から航法演習後の調査までは約3か月、航法演習後から
学内船舶実習後の調査までは約2か月の間隔があった。質
問紙には視界制限状態における航海場面を3場面提示し
た。操船方略(どのように操船して避航するかという判断)
とその理由を訊ね、操船方略の理由を7項目から複数回答
を可として回答させた。その組み合わせにより、①視界制
限状態の航法を選択
(
正答
)
、②視界良好な状態での船舶の
航法を選択、③ ①と②の両方を選択、④①と②のどちら
にもあてはまらない項目を選択、の4つに理由を分類した。
【結果と考察】
操船方略の正答率は、航法演習前、航法演習後及び学
内船舶実習後を比較すると、概ね
50
%から、
63
%、
73
と段階的に上昇する傾向が見られた。操船方略の理由の正
答率は概ね
25
%、
47
%、
53
%と上昇した。また、①の割
合が上昇すると③の割合は減少した。しかし、②の割合に
は大きな変化が見られなかった。②を選んだ学生の割合に
変化がないことから、視界制限状態の航法に関する知識が
不足、または欠如している学生には演習や実習の効果が無
かったと推察される。そのため学生の避航判断の能力を向
上させるためには、基本的な航法の知識を確実に身につけ
させることが必要である。
Oa04. 船舶の視界良好状態における避航判断について
-学生の避航判断の特徴-
片山湧造(神戸大学)、渕 真輝(神戸大学)
藤本昌志(神戸大学)、持田高徳(東京海洋大学)
キーワード:船舶、視界良好状態、避航判断、学生
【目的】
渕・古莊・藤本・臼井(
2007
)は、学生の避航判断時機
および操船方略(どのように操船して避航するかという判
断)が適切でないことを指摘している。そこで本研究では、
3回にわたり質問紙調査を行い、より詳細に学生の避航判
断の特徴を明らかにすることを目的とする。
【方法】
船舶職員養成コース(航海)に属する神戸大学海事科学
部4年生(必要な講義を受講済み)を対象とし、航法演習
前(
42
名)、航法演習後(
38
人)、学内船舶実習後(
48
人)
に同一の調査を行った。航法演習前から航法演習後の調査
間隔は約3月、航法演習後から学内船舶実習後の間隔は約
2月であった。調査では3つの航海場面を提示し、避航時
機、操船方略その理由を尋ねた。
【結果と考察】
提示した3場面における避航時機は、いずれも航法演習
前から航法演習後にかけて早くなり、航法演習後から学内
船舶実習後にかけては変化がなかった。航法演習では、船
型(船の大きさ)が避航判断時機に与える影響について説
明があり、学内船舶実習で乗船する練習船程度の船型につ
いての説明も含まれていた。したがって、学生の避航判断
時機は、航法演習によって安全余裕が少なくなったのでは
なく、船型に見合った時機に変化したものと推察される。
また2つの航海場面から学生の操船方略を検討した。望ま
しい操船方略を回答した学生は
17
名(
40
%)、
18
名(
47
%)、
31
名(
65
%)と増加し、非現実的な操船方略を回答した
学生は3名(7%)、2名(5%)、0名(0%)と減少し
た。一方で、望ましくない操船方略を回答した学生は
21
名(
50
%)、
17
名(
45
%)、
17
名(
35
%)と漸減した。非
現実的な操船方略を回答する学生はいなくなったが、望ま
しくない操船方略を回答した学生はあまり減少していな
い。望ましくない操船方略の内容を検討すると、避航する
相手の立場に立たず避航判断を行っていると推察され、こ
のことについて今後検討する必要がある。
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