海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
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Pa03. T大学における自覚的な泳力と実際の泳力との関
蔦木開・千足耕一・佐野裕司(東京海洋大学大学院)
キーワード:水泳、平泳ぎ、アンケート
【目的】
T大学ではプールにおいて水泳の実習を実施している。
参加学生に泳力を問うアンケートを実施し、その泳力に基
づきグループを構成しているが、グループ内で泳力の差が
大きいのが現状である。そこで本研究では実際の泳力とア
ンケートによる自覚的な泳力との間にどのような関係が
あるのか検討することを目的とした。
【方法】
調査は、2012年7月10~14日に実施された実習に参加
したT大学1年次生173名を対象とした。アンケートによ
る質問項目は「水泳は得意か」、「平泳ぎは得意か」、「平泳
ぎで泳げる距離」の三項目であった。「水泳は得意か」、
「平泳ぎは得意か」の 2 項目については「1:非常に不得
意」から「5:非常に得意」の5件法とした。「平泳ぎで泳
げる距離」については「1:0m、2:5m未満、3:25m未満、
4:50m未満、5:100m未満、6:200m未満、7:200m以上」
の7 件法とした。それぞれの質問項目と平泳ぎ200m 泳の
タイムとの関係を検討した。
【結果・考察】
各質問項目と平泳ぎ 200m 泳のタイムとの関係を検討し
たところ、全ての項目で 200m 泳のタイムとの間に負の相
関(水泳は得意か:r=.64、平泳ぎは得意か:r=.65、距
離:r=.75)が認められた(p<.01)。また、重回帰分析を
おこなった結果、有意な回帰式が得られた。回帰式はY=
565.07-8.90x
1
-19.47x
2
-30.37x
3
(x
1
:平泳ぎは得意か、
2
:水泳は得意か、x
3
:平泳ぎで泳げる距離)であった。
これら 3 変数の寄与率は 60%(R=0.77)であった。これ
らの結果から、平泳ぎ 200m 泳のタイムは各質問項目の回
答が高得点になるほど縮む傾向にあり、最も深い関係にあ
った項目は「平泳ぎで泳げる距離」であると考えられる。
【結論】
平泳ぎ 200m 泳のタイムは「水泳は得意か」、「平泳ぎは
得意か」、「平泳ぎで泳げる距離」の3項目全てに関して負
の相関関係にあった。その中で最も深い関係にあったのは
「平泳ぎで泳げる距離」であった。
Pa04. セーリングクルーザー乗船における初心者の不安
要因に関する研究
寺澤寿一(日本セーリング連盟、東京海洋大学大学院)
千足耕一・佐野裕司(東京海洋大学大学院)
藤本浩一・澤田美砂子(日本女子大学)
キーワード:セーリングクルーザー、初心者、不安
【目的】
セーリングクルーザーにおいて、乗船初心者は海という
環境に対する不安や船酔いなど、様々な不安を抱いている
可能性が考えられる。そこで本研究では、夏季シーズンに
日本各地で行われている体験セーリングの参加者(初心
者)を対象として、このような不安の要因を明らかにする
予備調査を行うことを目的とした。
【方法】
調査対象とした体験セーリングは、平成23 年8 月(東
京夢の島)及び平成24 年7 月(鹿児島錦江湾)に実施さ
れた2回である。対象者は、セーリングクルーザーの初体
験者から数回体験者の初心者 51 名である。調査は、乗船
における不安要因に関する調査用紙を作成し、体験セーリ
ングの前後に配布して行った。調査内容は、「年齢、乗船
経験等の属性」の他に、「乗船に関する要因」、「気象な
ど環境の要因」、「船酔いなど身体的な要因」の3尺度(各
尺度6 項目)、計21 項目の質問で構成され、回答方法は
4段階評定の選択肢とした。
【結果と考察】
乗船の不安要因尺度の分析は、21 項目の平均値、標準
偏差を算出し、主因子法による因子分析を行った。固有値
の変化は 7.18、2.78、1.69・・・となり、3 因子構造が妥当
と考えられた。そこで、再度 3 因子を仮定して主因子法・
Promax 回転による因子分析を行った。その結果、Promax
回転後の最終的な因子パターンと因子間相関から、第1因
子「乗船」、第2因子「身体的」、第3因子「環境」と命名
した。また、乗船に関する不安要因尺度の3つの下位尺度
に相当する項目の平均値を算出し、内的整合性を検討する
ためα係数を算出したところ、十分な値が得られ、3つの
下位尺度は互いに有意な正の相関を示した。
【結論】
本研究では、セーリングクルーザー乗船初心者の不安要
因を明らかにするための因子として「乗船」、「身体的」、
「環境」の3因子が抽出されることが示唆された。
1...,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31 33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,...51