海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
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Pb01. 津波被災地における川の体験活動
佐々木剛(東京海洋大学大学院)
キーワード:津波被災地,川の体験活動,閉伊川大学校
【目的】
東日本大震災の未曾有の災害に鑑み、河川環境・防災教
育の普及・啓発を目指し、被災を受けた地域の子ともたち
を支援するため、宮古市,閉伊川漁業協同組合,さんりく
ESD
閉伊川大学校主催による「『閉伊川大学校わくわく自
然塾』
~
閉伊川で遊ぼう
~
」が企画された。本研究では,自
然塾当日の児童の観察,ならびに8ヶ月後の保護者児童を
対象としたインタビュー調査を実施し,津波被災地におけ
る体験活動の意義と役割を考察した。
【方法】
2011年9月11日,宮古湾から30km程上流に位置する
岩手県宮古市「ゆったり館」前にある閉伊川河川敷におい
て,定員30名として参加者を募った。
運営体制としては、宮古市,さんりくESD閉伊川大学校,
閉伊川漁業協同組合,水圏環境教育研究室が共催となりリ
バーレスキュー協議会,岩手マリンフィールドの支援を受
けて行った。イベント当日は,ファシリテーターやインス
トラクターによる子供たちの行動観察を実施した。8ヶ月
経過後,参加した児童・保護者にインタビューを行い,保
護者ならびに児童の様子をうかがった。
【結果と考察】
わくわく自然塾の目的は、沿岸部の子どもたちに豊かな
森と川に囲まれた環境の中で,体験を通して安全、安心感
を積み上げなから、楽しく元気に遊んでもらい、閉伊川の
恵み(ヤマメ,イワナ,アユ)を食し水圏環境リテラシー
を高め,これからの復興に向けて「生きる力」を養おうと
いうものである。
被災地では十分に海での体験活動ができない状態であ
ったが,川での体験活動は児童生徒の新たなる気づき,発
見を引き出す「きっかけ」の場として期待されていること
が確認できた。
【結論】
わくわく自然塾は,水圏環境教育の理念に基づき「体験
活動で終わるのではなく,体験をもとにして水圏環境リテ
ラシー基本原則の理解を促し,責任ある決定,行動,伝え
ることができる人材の育成を目指しており,今度の継続的
な取り組みが求められる。
Pb02. 加速度脈波を指標とした簡便な潜水反射試験
佐野裕司(東京海洋大学大学院)、菊地俊紀(日本大学生
産工学部)、池崎亜沙美(メディカル統計株式会社)
キーワード:潜水反射、顔面冷却、加速度脈波
【はじめに】
水泳や潜水の適正を判断する試験の一つとして、潜水反
射試験がある。ここでは氷冷水嚢による顔面冷却で、著者
らが開発した加速度脈波を指標とした簡便な潜水反射試
験を紹介する。
【従来の潜水反射試験と問題点】
従来の潜水反射試験は、被験者を座位姿勢または立位に
させて冷水が満たされた容器に顔面を浸けて徐脈や不整
脈を誘発させ、それを心電図で捉えるものである。
従来の試験は、顔面を浸ける冷水の温度を常に一定に保
つための装置が必要で、且つ衛生管理上、冷水を毎回取り
替える必要があった。また、心電図の電極を装着して、座
位や立位で計測を行うため、安定した心電図が捉えにくい
といった問題点もあった。さらに、顔面を冷水に浸けるた
め、被験者は呼吸ができず苦痛が大きいといったデメリッ
トもあった。
【新しい潜水反射試験とそのメリット】
ここで紹介する新しい潜水反射試験は、被験者を仰臥位
にさせて、氷冷水嚢で額・頬・目・鼻を覆って顔面を冷却
させて徐脈や不整脈を誘発し、それを手指尖部の容積脈波
の二次部分波である加速度脈波で捉えるものである。これ
までに加速度脈波
a-a
間隔は、心電図
R-R
間隔とほぼ同値
を示すことから、心電図
R-R
間隔と同等に扱うことがで
きることが明となっている。
この試験は、氷冷水嚢を冷蔵庫や冷凍庫に保管すること
ができるので、氷冷水嚢の温度管理が簡単で、加速度脈波
のセンサーも手指尖部に紙テープ等で簡単に装着できる。
また、計測姿勢が仰臥位であり、加速度脈波を指標にして
いることから波形の動揺が少なく、安定した計測ができる。
さらに、被験者は口や鼻で呼吸ができるので苦痛が少ない
といったメリットがある。
【まとめ】
氷冷水嚢の顔面冷却により、加速度脈波を指標とした潜
水反射試験は、水泳や潜水の適正を判断する簡便で有用な
検査方法となりうるものと考えられる。
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