海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
27
Oa15. トライアスロンスイムにおけるストローク分析
富川理充・佐竹弘靖(専修大学)
キーワード:トライアスリート、外的要因、レース戦略
【目的】
一般的にオープンウォーター環境下でスイムが行われ
るトライアスロンレースは、測定環境の整備が困難であり、
スイム中のストローク分析はこれまでにない。本研究では、
トライアスロンレースのスイム中におけるストローク分
析―ストローク頻度の算出とその推移を明らかにするこ
と―を試み、今後のトライアスロンスイムにおける研究の
可能性を示すことを目的とした。
【方法】
2012年6月17日に秋田県酒田市で開催された第2回日
本 U23 トライアスロン選手権酒田大会の女子レースを対
象とした。荒天により距離がスプリントに変更され、スイ
ムは約600mとなった。11時のレーススタート時は雨、水
温22℃、気温20.2℃、南西の風9m/secという気象条件で
あり(大会事務局)、北北東の波が立っていた。
陸上に設置した DV カメラから選手の泳動作を撮影し、
その映像よりストローク頻度を算出、推移を明らかにした。
DV カメラ 1 台のみで撮影にあたったため、トップで泳ぐ
選手1名を対象者とした。参加選手には、事前に本研究の
内容等を説明し承諾を得ていた。
【結果と考察】
スタート地点のブイから折返しのブイ直前までの局面
を分析対象とした。前半(南向き)は 150 ストロークで
41.57±2.71cycles/min、後半(北向き)は137 ストロー
クで39.43±1.08cycles/minであり、後半のストローク頻
度が有意に少なかった(p<0.001)。また、前半のストロー
ク頻度は漸減し、後半は比較的安定していた。この差の主
な要因は疲労、潮流のいずれか、あるいは他に起因するの
かはさらに研究を進め明らかにする必要はあるが、本研究
により初めてトライアスロンスイム中のストローク頻度
を算出し、その推移を示すことができた。
【結論】
本研究の対象は1レース1選手のみであったが、研究を
継続的かつ対象を広げて進めることにより、選手の特徴や
気象条件、レース展開等の違いによるストロークの変化の
特徴を抽出することが可能と思われる。
本研究はJSPS科研費24700663の助成を受けたものである。
Ob01. 米国ハワイ州におけるJr.ライフガードプログラム
音野太志(琉球大学教育学部 特命研究員)
キーワード:ライフセービング、海、安全、教育
【はじめに】
日本財団による助成事業「海を活かした教育に関する人
材育成と実践研究」内の、海プロジェクト(班長:真栄城
勉)において、2012 年 7 月に約 3 週間、米国ハワイ州に
て、Jr.ライフガードプログラムや海浜安全管理システム
の視察・体験を行った。本報告は今後の我が国における海
浜プログラムの発展と、水難事故の予防に関する示唆を得
る事を目的とするものである。
【プログラムに関して】
2012年のハワイ州オアフ島でのプログラムは、島内の4
つのビーチで開催、月曜から金曜までの5日間のプログラ
ムが1 つのセッションとなり、6 月4 日から7 月20 日ま
での計7回実施、13歳から17歳の基本的泳力を有する者
を対象に 16 名を最大定員として行われていた。インスト
ラクターは、ライフガード(プロ:公務員)の中から2名
選出されていた。
参加費は無料だが、1 人につき 45 ㌦の寄付金をハワイ
ライフガード協会(NPO)に対して支払うこととなってい
た。ハワイライフガード協会は、特定非営利活動法人とし
てライフガードの活動を支援する組織である。
プログラムに関して、レスキュー方法や救急法、その他
スキルアップトレーニング等基礎的な内容はどの場所で
も共通して行われていたが、その他のプログラムに関して
は、各開催場所の環境を活かした内容を行っていた。
【まとめ】
プログラムの大きな目的は「水難事故の予防」であった。
毎年延べ 500 人前後の子供達がこのプログラムを受講す
る。その子供達が、終了後それぞれの場所へ戻り、友人や
家族に、海の危険性とその対処方法、その他にもプログラ
ムで学んだ様々な内容を伝えることで彼らだけでなく、周
囲も含めた水難事故の予防に繋がるという考え方である。
我が国でもライフセーバーが行うJr.プログラムは広が
りつつあるが、まだまだ発展途上の段階である。今後の我
が国でのプログラムを発展させていくにあたり、内容、環
境、人材、効果(必要性)その他様々な面において、今回
視察したハワイ州でのJr.ライフガードプログラムから大
きな示唆が得られるであろう。
1...,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28 30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,...51