海洋人間学雑誌 第1巻・第1号
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Ob02. 学年縦断マネジメント実践教育プログラムの構築
藤本 昌志(神戸大学)、渕 真輝(神戸大学)、
広野 康平(神戸大学)
キーワード:リーダーシップ、マネジメント能力
【目的】
現在、新社会人(大学生)にコミュニケーション能力やリ
ーダーシップなどのマネジメント能力が欠けていると指
摘されている。そこで本研究は現在希薄となっている、い
わゆる”上下関係”が要求されるプログラムを実施するこ
とでマネジメント実践教育の一方法として確立すること
を目的とする。
【方法】
神戸大学海事科学部が得意とする海上を舞台に設定し、
上下関係が必然的に求められるよう2年生から4年生まで
の学年を縦断する混成チームを編成した。このチームに対
し、”自然の脅威”を克服しなければならない「端艇によ
る帆走(以下、「巡航」という。)」を課題として設定した。
この巡航において4年生が陸上管理を、3年生が艇上の指
揮ならびに運航を、2年生は部下として乗船する。4 年生
は端艇には乗り込まず、陸上から自身が前年度経験した巡
航の経験に基づき 3 年生への技術指導や巡航実施上の注
意を与える。3年生は帆走技術を研鑽し巡航準備・計画を
立てる。巡航当日には初めて顔を合わせる 2 年生を部下
として各作業に当たらせる。2 年生は 3 年生の指示を聞
き行動することが求められる。
これを毎年実施し、個々の
学生は 3 年間にわたって継続的に参加した。
【結果と考察】
インタビューの結果は、半数以上の学生が社会に出てい
くために必要なスキルを取得できたと回答した。
3
年間の
授業として、学年の順に、現場で指揮を仰ぐ役割、指揮を
する役割、現場を管理する役割を実践することで、人と人
の関わり方を学びマネジメント能力を向上させることが
できると考えられる。
【結論】
本プログラムは社会を模擬的に経験させるものであり、
学生が社会人になった際に物事を考える一つの材料にな
る。本プログラムは学生のマネジメント能力向上に有効で
あり、マネジメント実践教育の一方法としてほぼ構築でき
た。
Ob03. アウトリガーカヌークラブの設立から現在までの
経緯~組織と運営に焦点をあてて~
小林 俊・千足耕一(東京海洋大学大学院)
キーワード:アウトリガーカヌークラブ、海洋教育
アウトリガーカヌーとは、船の本体から外側に張り出し
たアウトリガーがついた形のカヌーのことである。ハワ
イ・タヒチなどポリネシアの文化圏に多く見られ、古くは
人々の生活には欠かすことのできない乗り物として使わ
れてきた。
『湘南アウトリガーカヌークラブ』は、2005 年 1 月に
設立10人のメンバーと6人乗りアウトリガーカヌー(以下
OC-6)2 艇を所有しスタートした。クラブの活動のすべて
の基盤となるのが 44feet の長さのあるカヌーの保管場所
であるが、江の島西浦漁港を大型カヌーの保管場所として
片瀬漁業組合より許可を受け、クラブの拠点とした。2011
年度からは藤沢市観光協会の下、藤沢市より西浦漁港がカ
ヌーの保管場所として認可された。
当クラブで主催するアウトリガーカヌーのレース『湘南
オーシャンパドリングチャレンジ』は2012 年9 月9 日を
もって13回目を数え、約400名のパドラーと、15艇のOC-6
が集うようになった。レース主催の他には、江ノ島―城ヶ
島(約25km)を漕ぐ『油壺trip』や江ノ島―大島(約60km)
を漕いで渡る『Paddle to 大島』など、アウトリガーカヌ
ーを使用した多くのイベントも開催している。
2012年現在では、クラブのメンバーは94名に増え、ア
ウトリガーカヌーを通じ、多くのメンバーが週末に海と親
しむライフスタイルを送っている。2007年からはKids(小
学生)クラスも設け海洋教育にも積極的に取り組んでいる。
またクラブでは、OC-6 を6艇、4 人乗り1艇、2 人乗り1
艇、1人乗り3艇を所有しており、年間約150回のクラブ
活動としての練習会を中心とし、ビジターの方のカヌー体
験会や、小・中学校の課外授業の受け入れ、大学の授業な
どの海洋教育の現場としても欠かせない場所となってい
る。
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